【参加者レポート】第5回縁起でもない話をしよう会「明日死んでも大丈夫?もしもに備える相続の話」@鹿児島市和田
【参加者レポート】
事前に話し合っておくべき相続の問題
category - イベント参加 2019/ 03/ 15
先日、第5回目となる縁起でもない話をしよう会へ参加して参りました。
過去の4回で話題提供をされたのはいずれもドクターの先生で、終末期に関わるお話が多かったように思うのですが、
今回は今までと内容の毛色が変わって、「(遺産)相続」についての話でした。
話題提供をされたのは、弁護士の正込健一朗先生で、普段あまり考える機会のない「相続」の問題についてわかりやすく解説して下さいました。
この「相続」の問題は、相続すべきものがある人(被相続人)が生きているうちには何の問題も発生しないけれど、
その人が亡くなった瞬間から、急に様々な問題が噴出するということが結構あるそうです。
そしてそれらの問題により家族や親族間でもめることも多く、正込先生はそうした相談に多数乗っておられる経験豊富な弁護士さんでした。
冒頭、「なぜ相続の問題でもめるのか」に関して正込先生は3つの要素を挙げられました。
①被相続人(亡くなる人)の意思確認ができない:意思決定不足
②相続人が多い(配偶者と子だけとは限らない):コミュニケーション不足
③相続財産について情報が乏しい(何がどのくらいあるのか教えてもらっていない):情報不足
なるほど遺産相続の話など、普段の家族の日常会話の中ではまず出てきていません。
人が亡くなる原因は様々ですが、すべての原因が遺産相続について考える時間を与えてくれるものとは限りません。ある日突然命を奪われるということも世の中にはあるわけです。
そうすると、亡くなった後に実は親が借金をしていてカード会社から連絡が来ることで初めてその存在が明らかになるですとかいうケースもあって、
相続する対象は必ずしもプラスの財産だけとは限らず、マイナスの財産をどうにかしなければならないという問題に急に直面するという事態が出てくるというわけです。
また法律で定められている相続人(法定相続人)の優先順位としては①配偶者、②子、③親、④兄弟(甥、姪まで)だそうなのですが、
そういうことを知らなければ、また持っていた不動産が利益を生み出している場合など、遠くの兄弟が相続権利を争う戦いに急に参戦するというようなことにもなりかねません。
しかしそうしたトラブルを未然に防ぐために、生前に遺言書を作成しておくことがかなり役に立つのだそうです。
ただし遺言書として法的な効力を持つためには作成方法に一定のルールがあるそうなので、ここは弁護士や司法書士さんに相談しながら作成するのがおすすめだそうです。
ちなみに弁護士さんに依頼する場合と、司法書士さんに依頼する場合の違いは、「もめそうな案件なら弁護士、もめなさそうな案件なら司法書士」という役立つ知識を教えて下さいました。
さらに言えば、仮に法的な効力がなかったとしても、被相続人が何かしら本人の意思を残す文書を作成していれば、
それをきっかけにもめなくて済むように弁護士さんがうまくマネジメントすることができるケースもあるので、
とにかく生前の意思を形に残すことの重要性を強調されていました。
「意思決定不足」「コミュニケーション不足」「情報不足」の3点に関しては、
過去に行われた縁起でもない話をしよう会でも扱われた終末期医療の話にも通じるように思います。
①意思決定不足→本人が事前に人工呼吸器装着や胃瘻造設などの延命処置について、どうしてほしいのかをあらかじめ形に残しておく
②コミュニケーション不足→一人で勝手に決めるのではなく、いざという時に家族が考えやすくするために、自分の意思がどうであるかについて情報共有をしておく
③情報不足→そもそも人工呼吸器とか胃瘻、中心静脈栄養、末梢静脈栄養などがどういうものであるのかについてあらかじめ学んでおく。その上で考えて、家族とそのことをシェアしておく。
結局、「縁起でもない」という価値観が、こうした誰にでも起こるはずの出来事について話をすることから遠ざけてしまっており、
「意思決定不足」「コミュニケーション不足」「情報不足」は縁起でもない話にまつわる共通構造であるように思えます。
今回のように「情報不足」を埋め合わせるために、弁護士さんから直接「相続」についての情報をわかりやすく教えてもらえたことは非常に有意義でしたし、
この情報をきっかけにして、自分はどうするかという事を考え、
そして家族にそんな縁起でもない話をすることへとつなげていきやすくすることもできるわけです。
ちなみに正込先生によりますと、相続すべき財産の多い少ないはもめるかもめないかという事にあまり関係しないのだそうです。
すなわち、「ウチはそんなに相続すべき財産の話など別にないから、そんな縁起でもない話なんかしなくても大丈夫だろう」ではなく、
実は把握していなかった財産があることがわかったり、仮に相続すべき財産が少なかったとしてももめるケースはあるのだそうです。
問題を先延ばしすることなく、元気なうちに縁起でもない話をしておくことの重要性を、
私は強く感じた次第です。
たがしゅう
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